PM memorandum

Product Managementにまつわる記事をポストします。twitter: @kyosu_ke

企画分析の4象限とPMに必要な分析力

これはなにか

企画にまつわる分析、およびその中でPMに必要な分析の種類についての、私見をまとめたものである。

前回、『「価値の検証」を構成する4つのステップ』で、企画のリリース後の分析についてまとめた。 上記の記事では、事後の分析のみにフォーカスしていたが、この記事にも書いたように、企画の前半のフェーズでも、分析を行うことが多いため、今回は企画のフェーズを横断して、「PMが担う分析」について書く。

kyosu-ke.hatenadiary.jp

また実際に、分析はどこまでやればよいか?どこまでの能力が必要なのか?どの程度のスキルがないといけないのか?といった質問を受けることも多く、その際によく話すことをまとめている。

なお、本記事で想定しているのは、分析担当のメンバーがいるチームを想定している。 よって、分析専任官などいないスタートアップであれば、CEOでもPMでもエンジニアでも強い人を中心に一丸となってやるしかないし、場合によっては分析に時間をかけること自体がが正しくないケースもあるため、本記事はあまり参考にならない。

企画にまつわる分析の4象限

企画にまつわる分析を、「施策実行の前後」、「分析の複雑さ」の2軸で分類する。 2つの軸の判断基準は下記とする。

  • 施策実行の前後:
    • 前=「課題の選択」や「解法の選択」フェーズ
    • 後=「価値の検証」フェーズ
  • 分析の複雑さ:
    • データ抽出の難易度、分析軸の多さ、統計学的知識の必要有無など

「施策実行の前後」を縦軸に、「分析の複雑さ」を横軸に取ると下記の図のようになる。

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  1. 第一象限: 施策前に行う複雑な分析
  2. 第二象限: 施策前に行うシンプルな分析
  3. 第三象限: 施策後に行うシンプルな分析
  4. 第四象限: 施策後に行う複雑な分析

以降、第一象限〜第四象限について、詳述する。

1. 第一象限: 施策前に行う複雑な分析

プロダクト全体の成長戦略を描くような分析や、「nカ年計画」のような、個々の施策を束ねる根幹の戦略を作るための分析がこれにあたる。

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また、そこまで規模の大きくないものとして、相関分析やヘルスチェック分析などもこの象限に含まれる。

どちらにせよ、分析を生業に生きてきたプロフェッショナルにお願いするのがベストである。 バックグラウンドが元データアナリストなPMで無い限り、この象限に着手するのは避けたい。

2. 第二象限: 施策前に行うシンプルな分析

簡単なファネル分析や、影響範囲の調査、対象者数の確認など「課題の選択」や「解法の選択」のフェーズで必要なデータの収集が該当する。

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例えば、ECサイトで特定の導線の削減を検討している場合に、対象となる導線経由で発生している購入の件数および金額を調べるケースなどである。

また、別の例を上げると、チュートリアルやオンボーディングのフロー改善を行う場合に、各ステップでの離脱率を調べるケースなども該当する。

これらを抽象化すると、企画のおおまかなポテンシャルや、施策の仕様決定を行うためのデータなど、粗くても良いからクイックにデータが必要なケースで行う分析がこの象限にあたる。

そういったケースの場合は、PM自身がクエリを書いたり、BIツールなどを利用して分析ができると良い。 粗くともスピーディーにデータが必要な場面では他者と連携するよりも、さっと自分でデータを出せるほうが早くアウトプットにつながるためである。

3. 第三象限: 施策後に行うシンプルな分析

施策がリリースされてから数時間後、翌日レベルでの速報分析がこの象限に該当する。

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リリース直後は、深い洞察や分析でなくともよく、多少粗くともスピードを優先してチームに共有を行うことが大切である。

なぜならば、チームは貴重な時間というリソースを使い、PMの立てた企画を実行に移しており、その結果がポジティブなのかネガティブなのか、またはジャッジにはもう少し時間経過が必要なのかなども含めて、知る権利があるからだ。

この場合も第二象限と同じで、粗くともクイックな分析が求められる。 よって他者に依頼するよりも、PM自身でクイックに分析できたほうが良い。

新しく追加した機能の分析を行う場合など、既存の分析ダッシュボードには当該機能の分析項目が乗っていないことも多くあるため、最低限のクエリやBIツールを駆使する技術を身に着けておくと良い。

4. 第四象限: 施策後に行う複雑な分析

施策をリリースしたあとに、その施策が良かったか、悪かったのかを評価するための本格的な分析である。

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具体的には、リフト分析やABテストの分析などがあり、統計的な有意性のジャッジを求められるケースがあり、専門性の強い象限となる。

施策後にその結果の良し悪しを判断するという状況においては、スピードよりも、結論の確からしさや、メッセージの明瞭さが重視されるため、拙速な分析ではいけない。

この領域も分析専門のメンバーにお任せするほうがベターである。

まとめ

PMが関わる範囲での分析について「施策実行の前後」と「分析の複雑さ」という2軸で、4つの象限に分けた。

その中でも、精度以上にスピードが重視される、第二、第三象限のシンプルな分析をPMは扱う必要があり、その程度に合わせて、最低限の分析の技術を身につけておく必要があるだろう。