PM memorandum

Product Managementにまつわる記事をポストします。twitter: @kyosu_ke

PdM職の細分化 3つのロール

これはなにか

Product Manager Advent Calendar 2018の16日目の記事です

この記事は、定義が曖昧なPdMという職種の役割を、構造的に分解した記事である。

ソフトウェアエンジニアに様々なサブカテゴリーがあるように、PdMも細分化されたサブカテゴリーがあると考えており、本記事ではPdMのサブカテゴリーを構造的に分解する。

なお、ハード面への言及に限定し、リーダーシップなどソフト面については扱わない。

誰に向けたものか

この記事はこんな方に読んでもらうことを想定している。

  • PdMらしき仕事をはじめた駆け出しの企画職
  • PdMを育成する立場になった新任マネジャー
  • 役割に合うPdMが採りたい採用担当者

解決したいことと目的

この記事では、職種としての全体像が不透明なことに由来する、下記を解決することを目的としている。

  • PdMという職種にどんな方向性があるかわからなく、将来設計やキャリアの指針が定まらない
  • いまの業務が全体のどこに位置するかわからなく、徒労感がつのる

前置きが長くなったが、本編に入る。

PdM職のロールマップ

PdMをロール別に3つのサブカテゴリーに分解し、企画のバリューチェーンの上流から下流までマッピングすると、下記の図のようになる。

また、ここでは企画に関連する他専門職種についても、その相対的な位置を示している。

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横軸に3種のロールをおき、縦軸に企画の進行過程をとる

ロールは3種あり、詳細は次項目以降で詳述する。

企画のバリューチェーンは、調査分析〜リリースするまで、企画の流れを上から下にマップしたものである。

また、企画のバリューチェーンについては下記の記事に詳しく書いている。興味のある方はこちらからどうぞ。

kyosu-ke.hatenadiary.jp

また、役割を便宜上3つの職種ラインに分けているが、実際の現場では複数の役割を兼ねて働くことのほうが多いため、一人のPdMが必ずしも一つの役割しか持たないというわけではない。

PdMの3つのロール

ここからは、前出の図に則って、PdMの3つのロールについて詳述する。

機能プランナー | Feature Planner

このロールは新規機能の追加、既存機能の改善、など機能を企画する役割だ。

新規アプリの立ち上げもこのロールに含まれる。 PdMといって、真っ先に思い浮かぶのはこの役割だろう。

具体的には、ユーザーの課題やニーズを捉え、その課題やニーズに対して、適切な解法として機能を考えて、ユーザーに届けるところを担う。

アプリ内マーケター | In-App Marketer

このロールはサービス内でのキャンペーンやコミュニケーション設計を企画・実行する役割だ。

具体的には、ポイント配布キャンペーンやセール等のインセンティブキャンペーンや、Push通知やお知らせ配信などのノンインセンティブコミュニケーションを中心として、ユーザーセグメントに応じた適切なコミュニケーションを図ることを担う。

コンテンツマネジャー | Contents Manager

このロールはサービス内のコンテンツを更新、拡充させていくことを担う役割だ。

具体的には、オウンドメディアの運営や、メディアであれば記事の編集、動画系サービスであれば番組企画などを担う。 ECサイトでのトレンドランキングやメルマガ運営や、CGM系のサービスであれば、コンテンツを投稿してもらうためのトピック運営などもここに該当する。

3つのロールと企画工程によるタスクマップ

ここまで、ロールマップの説明を展開してきたが、これらの理解をベースにもう一歩、構造化を進める。

PdMの業務は3つのロール x 企画工程でマッピングすることができる。(※図内の①〜⑨はイメージを掴むための一例である)

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PdMのタスクは3つのロール x 企画工程によるマッピングで定義できる

企画工程はシンプル化するために3つにまとめているが、任意の切り方で捉えて構わない。

そして、このマッピングを利用して、下記の3点を考えることができる。

  • [過去]これまでの業務経験は、マップのどこを埋めるものだったのか?
  • [現在]いま取り組んでいる業務は、マップのどこに当てはまるのか?
  • [未来]これからどんな業務を選択し、マップのどこを埋めたいのか?

今後どういった方向を目指すのかを考えた上で、このタスクマップを使うことで、これまでの経験を棚卸しし、いまの業務に意味を与え、今後の業務選択の指針を作ることができる。

こういった整理により、曖昧で見通しの立ちにくいキャリアイメージを構造的に捉えることができるのではないかと思う。

キャリアパスのあり方

最後にほんの一例に過ぎないが、キャリアパスについてまとめる。 上述のPdMの3つのロールでの経験を積んでいくと、掛け合わせで新たなキャリアパスが見えてくる。

1/ グロースハッカー | Growth Hacker

上記の分類に従えば、アプリ内マーケターとしての経験および、機能プランナー、コンテンツマネジャーとしての企画設計の経験が必要なキャリアであろう。 加えて、ユーザー獲得マーケティングの経験もあると立体的に業務が遂行できるだろう。

2/ UXデザイナー | UX Designer

機能プランナーを経て、定性調査への適正や興味が強くある場合、ユーザーニーズを紐解き、それを実現する設計に注力するためにUX Designerになるという道がある。 ユーザー体験を作るために、インターフェース設計が必要になる場面が多いので、ユーザーインターフェース(UI)への深い理解と経験も必要になる。

3/ プロダクトオーナー | Product Owner

プロダクトのすべてを司る "Mini-CEO"としての役割である。 プロダクトによって必要度合いの濃淡はあれど、このキャリアのためには、前述のPdMの3ロール全領域に精通する必要があるだろう。 またそれだけではなく、オペレーション構築・最適化、事業計画・会計、組織開発・採用等も重要なため、それらの知識と経験も同時に必要になる。

まとめ

エンジニア、デザイナー、会計、マーケティング、リーガルなど他職種は学問として存在するが、PdMには学問が存在せず、俯瞰して体系的に全体像を学ぶ機会は少ない。

私自身が暗闇の中を進む中で、手探りで描いてきた地図であるが、だれかの役に立つと幸いである。