PM memorandum

Product Managementにまつわる記事をポストします。twitter: @kyosu_ke

株式会社メルカリを退職しました

これはなにか

いわゆる、退職エントリと言うやつである。

先日、約2年と6ヶ月の間勤めた株式会社メルカリの最終出社を終えた。

多大なる感謝と濃密すぎる2年半で、めっちゃ長文になったけど、ご勘弁を。

目次

  • なぜメルカリに入ったのか
  • メルカリでなにをしたのか
  • メルカリで得たもの
  • 内側から見たメルカリ
  • では、なぜ辞めるのか?
  • なぜそれをやるのか?
  • ぐちゃぐちゃした思いの中で、ひとつ明確に言えること
  • 最後に

なぜメルカリに入ったのか

メルカリに入る前は、サイバーエージェントで一貫してゲーム畑のPMをやっていた。

SFでのアメリカ支社の立ち上げ→大型ソシャゲタイトルの運用→自社IPタイトルの新規リリースetc.と、いろいろと経験を積ませてもらった。

きっかけはBizDevのミートアップだった。「ちっちゃいベンチャーヤマト運輸と提携、ってどんなマジック使ってんのよ?」くらいの、ほぼ冷やかしと言っても過言ではない気持ちで参加したミートアップだった。

そこから「業務理解のための面談」を重ねて、気がついたらオファーを頂いていた。

元ウノウ・ジンガ→某チケットフリマの創業メンバーの友人が、最後のひと押しとして「今のメルカリには今しか入れないよ」的な、何かを言っているようで何も言っていないような、しかし僕にぶっ刺さった深イイ言葉をくれて、決断した。

とはいえ、自分のジャッジなので、そこは自分で考えて決めており、当時のノートを見返すと、こんなことを考えつつ、US市場に再挑戦するための意思決定していた。

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よくわかんないけど、いろいろ考えた風味

当時、新卒採用時に自分をアメリカ配属にしてくれた担当役員の方が退任されており、海外市場へ向けたサービスに挑戦する機会は減っていた。

帰国してからは、「まずは地力を上げて、いつか来る大リーグでのバッターボックスに備えよう」という気持ちで一生懸命素振りをしていた。

しかし、当たり前のことだが、素振りをしていても、大リーグでホームランを打つことはできない。

その理由はシンプルで、打席に立っていないからである。

メルカリでなにをしていたのか

メルカリでもまた、US担当→JP担当→話題のメルペイ関連業務と、大変にいろいろな機会を頂き、最終的にメルカリUSで9ヶ月、メルカリJPで1年と9ヶ月の期間を過ごすことになった。

それぞれのステージで、これまでのモノの考え方が、いい意味で覆される経験をし、躓くたびに、「なにくそ」という気持ちとともに知的好奇心、探究心が満たされる2年半だった。

アサインは念願のメルカリUS

転職時の思いもあり、もちろんメルカリUSのアプリを担当するプロダクトマネジャーとしてメルカリに入社した。

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入社初日に撮ったエントランス。タイプロゴが旧ロゴ

当時はほとんどのリソースをUSアプリに振り切っており、僕も東京オフィスから、USアプリを開発するチームへの配属となった。

余談だが、入社の翌日にメンター兼上長がKR0案件(全社プライオリティトップの超重要案件)にアサインされ、「明日から1ヶ月アメリカ出張になったから、あとよろ!」って感じで放置プレイ セルフOJTの機会をいただき、これがGO BOLDか(そうじゃない)と思ったことを覚えている。

メルカリUSでは、検索周りの改善、オンボーディングの改善、アプリの下タブ化(ハンバーガーメニュー→タブバー)、ホーム改修、ファセットを利用した絞り込み検索など、様々なチャレンジをさせてもらった。

この頃は今以上に技術の「ギ」の字もわかっておらず、多くのひとに迷惑をかけながら仕事をさせてもらい、根気よく教えていただいた結果、今の自分がある。

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JP アプリの下タブ化に先行すること丸2年、USは下タブ化されていたのだ

メルカリJPへの異動

そこからJPへの異動が決まり、メルカリチャンネルの0→1の立ち上げ、スマートフォンに特化したカタログ出品や、検品業者を挟んだ新取引スキーム「あんしんスマホサポート」、決算説明会で取り上げられたカテゴリーグロース戦略の一端を担うなど、ここでもあげるとキリがないほど機会を頂いた。

特にメルカリチャンネルは上海出張から帰国するやいなや、企画→デザイン&仕様策定→開発→ QA→リリースまで含めて全行程2.5ヶ月でリリースしており、タレント起用の大型プロモーションも仕込んであり、スピードもクオリティも求められるプロジェクトだった。

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※本当に最高のプロジェクトだった

引用元: 本日夜10時~「ガイアの夜明け」でメルカリの舞台裏に密着! #メルカリな日々 2017/10/10

また、スマートフォンのプロジェクトでは、自分の未熟さから、企画から0スタートをしなおすという失敗もあり、学びが多かった。

もともと、個人最適を突き詰めたい宗派に属しているのに、なぜか全体非最適が許せない性格で、障害対応やら、組織の狭間におちるルーズボールを拾って過ごしていたら、社内に関わる人も増えてきて、気づくと最後の9ヶ月はマネジャーとして過ごしつつ、メルカリ本体の数字を伸ばすチームと、メルペイをメルカリに組み込むチームのマネジャーを兼務していた。

ここでも見える世界がぐっと広がり、自分でも施策を持ちつつも、チームのスループットを上げる思考に時間を割くようになった。

メルカリでのマネジメントの経験を通じて、当然様々な学びを得ることができたが、書けないことも多いのと、さらにものすごく長くなるので割愛。

メルカリで得たもの

USチーム、JPチーム両方での経験を通じて、この記事であげたような、プロダクト・サービス・カスタマーに向き合う姿勢を学んだ。

kyosu-ke.hatenadiary.jp

このブログでの発信含め、これらはほぼ全てメルカリで得たものと言っても過言ではない。

日々発生する、BIチームとのやりとりからは、どうKPIを扱い、どう課題を設定し、解決策にアプローチするか、といった問題解決の基礎的な部分を学んだ。

このBIチームと問題解決を通じて、その考え方をINPUTし、また別の課題でOUTPUTしてフィードバックを得るというループはPdMにとっての最大の福利厚生であったと思う。

特に、この記事のお二人にはめっちゃ学ばせてもらった。メルカリでこの2人と働くと、企画者としての第三の目が開眼するので超絶オススメ。

一緒にモノを作る大切な仲間である、エンジニア、デザイナー、QAのみなさんからは、ものづくりの楽しさ、お客様に触っていただけるモノを世に出すことの、苦しみ・喜び・楽しさを教えてもらった。

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ほんとに愛しかない。

また、プロダクトチームの良さがフォーカスされて伝わりがちだが、むしろそれ以外のPR, CS, リーガル, 人事, BizDev, マーケ, ファイナンス その他のコーポレート部門の仕事こそ神がかっていて、「プロダクト以外の面でのサービスの伸ばし方」のベストプラクティスを学べたのは今後の大きな資産である。

内側から見たメルカリ

人材のブラックホールと呼ばれているだけあって、各職種でトップクラスのプロプレイヤーがたくさんいる。 そういった人たちと働くのは本当に楽しく、吸収するものが非常に多い。

本来USをやりたかったのでJPに異動になったとき「転職時の本来の目的とズレるし、モチベーション続かないのでは…」と一瞬危惧したのだが、そんなものは全くの杞憂で、非常に楽しく学び続け、気づいたらUSへの拘りは小さくなっていた。

それくらい、毎日が楽しいのである。

組織の特徴として、よく挙げられる点だが、やはり下記は外せないし中から見ててもそのとおり。

  • 風通しがよく、積極性と論拠がしっかりあれば、のびのびとなんでもやれる空気がある
  • プロダクトを愛し、お客様のほうを向いている人が多い
  • 年齢層も比較的高めで、落ち着いて仕事に集中できる
  • 働き方もフレキシブルで、子持ち家庭にとってかなり働きやすい

控えめに言って最高な環境だった。

では、なぜ辞めるのか?

なぜそんな最高の環境にいながら、辞めるのか。

ズバッと一言で理由を言い切るのは難しいのだが、次の挑戦として、医療ドメインでVertical SaaSを提供する会社、株式会社ドクターズプライムを友人と共に創業した。

救急車のたらい回しをなくすサービスで、救命救急の領域で病院と医師をつなぐ橋渡しを行う、SaaSプロダクトを提供する。

医療領域のバーティカルSaaSで、プロダクトの類型としては、マッチングプラットフォームに分類される。

広義での医療系スタートアップはたくさん出てきているが、「医療」と一口に言っても、ドメインをよく見ると、DNA解析、創薬、ヘルスケア、予防医学、遠隔診療、電子カルテ、診断領域と切り口は様々である。

救急救命の現場もまた、解決すべき課題が多く、構造的な問題により、失われている命があることは否定できない。

なぜそれをやるのか?

ソーシャルゲーム → CtoCマーケットプレイスと来て、なぜ救命救急のSaaSを創業するのか?

うまく言葉がまとまらないのだが、いくつかの理由がある。

2人の祖母の死と病

先週末、母方の祖母の三回忌があった。

2年前の2017年の2月、アメリカ出張中に、母から電話で話したいという旨のLINEが来た。

当時SF市内にあったオフィスで、ユーザーインタビューを終えた後に電話をかけると、母方の祖母が亡くなったと聞かされた。

急遽、帰国して最後の別れを告げた。

そのときに、人はいつか死ぬ、という当たり前のことを理解した。

また、時を同じくして、大学を卒業するまで一緒に暮らしていた父方の祖母が胃癌の宣告を受けた。

僕にとっては追い打ちをかけるような、急な知らせで、最終的に彼女は胃の殆どを切除し、情報の非対称性と無力さを強く感じた。

この経験に、人の死、命の有限さ、それを前にした無力さを突きつけられた。

パートナーの存在

一緒に会社を創業したパートナーがいる。

代表取締役を務める彼は、当時通っていた中高一貫校の同級生である。

青春時代を共に過ごし、のちに聖路加国際病院という、救命救急で有名な病院の救命救急リーダーを務めた後、医療系ベンチャートップセールスとしてビジネスの現場に立っていた。

彼と久しぶりに再開し、会話を重ねる中で、気兼ねせずに率直に話ができる間柄でありながら、自分のプロダクトを作りサービスを運営していく知識・経験と、彼の医療ドメインの知識とセールスの経験が、お互いに補完し合える関係性であることに気がついた。

僕は自然にしていると、他人を意識し、気を遣い、萎縮して、忖度してしまうような人間なので、ナチュラルに遠慮・気兼ねせずに思ったことが言える関係性には非常に助けられている。

メルカリでの体験と着想

最後に、メルカリでの経験も、この意思決定に影響を与えており、背中を押されている。

「モノを欲しいと思う【需要】に対して、モノを渡して対価を得る【供給】を、【直接マッチ】させる」というメルカリの仕組みを抽象化して考えると、救命救急の分野にも応用ができることに気がついた。

メルカリというサービスの企画・運営経験が、自分のプロダクト・サービスの輪郭をはっきりさせてくれたと言える。

また、運良くメルカリ上場の瞬間に立ち会えており、全員が一体感をもって生み出す、その熱量を目の当たりにして、このような組織と瞬間を自分たちの手でも作りたい、と感覚的に思ってしまったことも、この決定に少なからず影響を与えている。

ぐちゃぐちゃした思いの中で、ひとつ明確に言えること

入社の前からその先まで、とりとめもなく、長文を書いてしまい、ほぼ自分史みたくなってしまったが、メルカリは掛け値なしに素晴らしい環境で、先日リリースされたメルペイをはじめとして、仕込んでいる種もあり、これからも輝く場であり続けると思う。

「それでもなぜ辞めるのか?」という問には、きれいに回答できないのだが、ここまで述べてきたような色んな思いが綯い交ぜになって、こうなっている。

そんな中でも、明確にひとつ言えるのが、僕自身も30歳になり、3人目の子供が生まれようとしている中で、「はっきりとした形で世の中に対してポジティブな変化を起こすこと」を、自分自身に対して求める気持ちが強くなっているということだ。

世の中の構造を変え、人々の生活をより良くすることで、子どもたちの世代に対して、自分自身に対して、「自分たちの手で、世の中をより良い方向に変えた」と誇れる仕事をしていきたいと思っている。

最後に

一緒に働く仲間を募集しています!

職種としては、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、デザイナーを募集しています。

サービスの状況としては、ベータ版としてローンチしているモバイルwebを中心に、プロダクトの磨き込みをしており、一通りの機能が整った段階でiOS/Android等のネイティブアプリを展開していく予定です。

すでに数十の病院さまと、数百の医師の方々にご参加頂いていて、現場のニーズも強く、手触り感のあるかたちで順調な滑り出しをしています。

技術スタック的にはこんな感じです!

Frontend

  • TypeScript
  • React
  • Almin
  • Sass
  • Webpack
  • Jest
  • Prettier
  • Yarn
  • Netlify

Backend

Programing Language

  • Go

Public Cloud

Logging, Analytics

  • Stackdriver Logging
  • BigQuery

Other

  • Serverless

少しでもピンと来た方は、まずは副業からでも良いですし、とりあえずお茶・寿司・肉でもOKですし、インターン募集しています。

そのほかの職種についても随時募集しているので、下記twitterのDMか、採用情報ページまでお気軽にご連絡ください!

twitter: @kyosu_ke

与えてもらった機会と、関わっていただいた皆さんすべてに本当に感謝しています。

めちゃくちゃお世話になりました!

こういう会社を作りたいと思える、最高の会社でした!!

ありがとうございました!!

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メルカリでの最後の一枚